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“シンコウ”プロジェクト北海道 vol.11 美深町『チョウザメ』

”シンコウ”プロジェクトとは?

北海道には、生産数がわずかでなかなか味わえないもの、特定の地域・お店でしか味わえないもの、特定の季節しか味わえないものなど、まだまだ知られざる魅力的な食材があります。そして、その食材の背景には、情熱をもって育てている生産者がいます。
このプロジェクトは、そんな北海道の知られざる食材を”深耕”し、その食材を通して人と人との“親交”を生み出し、北海道とその地域、そして食の魅力で地域の“振興”につなげたい
という思いから始まった、大丸札幌店、O.tone(あるた出版)、RETRIP(trippiece)、ジェイアール東日本企画、poroco(えんれいしゃ)による地域振興を目的とした合同プロジェクトです。

第11回目は、美深町で養殖されている「チョウザメ」を紹介します。


チョウザメの魅力とは

チョウザメの卵であるキャビアはいわずと知れた高級食材。輸入されているものは品質保持のため塩分濃度が高いものが多く出まわっていますが、国産ではその必要がなく、フレッシュで魚卵本来のコクや旨味が味わえます。

またチョウザメの魚肉はクセがなく、淡白な味わいながら脂もしっかりとのっているのが特徴。刺身はもちろん、加熱してもパサつきがないので、和洋中のどの料理でもよく合うと好評です。

「美深温泉チョウザメ堪能プラン」の料理

友好の印に贈られたチョウザメ

戦後、旧ソ連との友好の印としてチョウザメ品種「デステル」の稚魚を貰い受け、国内数カ所で試験飼育されたのが、日本のチョウザメ飼育の始まりです。その約20年後、寒冷地での生育実験場所の一つとして手を挙げたのが美深町でした。

1983年には300匹の稚魚を水産庁から貰い受け、まちでの養殖がスタート。

当初は三日月湖に生け簀を作り養殖していましたが、チョウザメは海底・川底を泳ぐ生物のため、生け簀の中の様子が見えにくく、1997年に建てられたのが「チョウザメ館」です。本格的な施設として生育環境を整え、手狭になった現在は廃校になった小学校のプールも活用しています。

古くに遡るチョウザメと美深町との繋がり

美深振興公社の鈴木渉太さん

そんなチョウザメについて今回、話を聞かせてくれたのが美深振興公社のチョウザメ担当、鈴木渉太さん。

鈴木さんは地域おこし協力隊として美深町に移住、その後同社にて引き続きチョウザメ担当として働いています。

「美深町が声を上げた理由の一つに、100年ほど前まで天塩川に天然のチョウザメが生息していた歴史が挙げられます。現在、国内では『ミカドチョウザメ』は絶滅したといわれていますが、北海道の名付け親・松浦武四郎氏の手記には、天塩川にかなりのチョウザメが生息していたと思われる記録も残っているほどです。卵や肉は食料に、鮫皮はアイヌ民族の方達がタバコ入れや小刀の鞘に使用していたそうです」。

手探りで進められた養殖

そもそもチョウザメの養殖を行なう事業者は極端に少ないため、ほとんど知見がなく、飼育は困難を極め、人工ふ化がうまくいかない時期もありました。

そして20年ほど前から北海道大学と共に試行錯誤を重ね、ようやくキャビアを収獲できるようになりました。

「チョウザメにとって水温は高ければいいというわけではありません。冬は冷たく、夏場は温かくするなど、生育には四季を感じさせるような水温差があった方がいいことも、日々の養殖活動のすえ徐々に分かってきました。餌の種類や量を変えてみたり、一つの水槽に何匹入れるかを調整したり。都度反省点をあげ、様々な方法を試しながら収穫量を少しずつ増やしてきました」と鈴木さん。

チョウザメ養殖のこれから

「個人的には、もともと美深町に生息していた『ミカドチョウザメ』を復活させられたら」とも話す鈴木さん。

今後はキャビアの収獲量をもっと増やし、この事業を軌道に乗せることが目標だそう。

「チョウザメは非常にデリケートな魚です。美味しいキャビアと魚肉を収獲するために、チョウザメの養殖時の水をキレイな状態で保ち、生育状況に合わせ与える餌を調整、さらに出荷の前には餌を抜くなど、様々な工夫と工程を行なっています。

長年の試行錯誤を経て、今では美深温泉での料理や、町外のイタリアンレストラン、寿司店などで美味しいチョウザメを提供できるようになりました。40年かけてやっと長年の目標が手に届くところまできたので、みなさんにもっと美深町のチョウザメについて知ってもらいたいです。キャビアはもちろん、魚肉も美味しいのでぜひ、食べてみてほしいですね」。



今回の記事はporocoスタッフMHが担当しました

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