”シンコウ”プロジェクトとは?
北海道には、生産数がわずかでなかなか味わえないもの、特定の地域・お店でしか味わえないもの、特定の季節しか味わえないものなど、まだまだ知られざる魅力的な食材があります。そして、その食材の背景には、情熱をもって育てている生産者がいます。
このプロジェクトは、そんな北海道の知られざる食材を”深耕”し、その食材を通して人と人との“親交”を生み出し、北海道とその地域、そして食の魅力で地域の“振興”につなげたい
という思いから始まった、大丸札幌店、O.tone(あるた出版)、RETRIP(trippiece)、ジェイアール東日本企画、poroco(えんれいしゃ)による地域振興を目的とした合同プロジェクトです。
第10回目は、弟子屈町で栽培されている『摩周湖の夕日』を紹介します
南国で穫れるイメージが強いマンゴーですが、少ないながらも北海道にも産地があり、とびきり甘いものが作られています。弟子屈町でマンゴー農園を経営する「ファーム・ピープル」農園長の村田陽平さんにお話を聞きました。
会社の創業は2011年。陽平さんの父・光宗さんは釧路市で電信工事業を営んでいましたが、新たな事業として一次産業に着目。当時注目を集めていた宮崎マンゴーを偶然目にして、趣味の温泉巡り中に温泉熱を利用して栽培することを思いつきました。土地勘のある弟子屈町に目を付け、町長に直談判するも断られる、ということを何度も繰り返すうち、熱意にほだされた町長と土地を探し、温泉が湧く土地を購入。一度に30棟のハウスを建設、温泉熱を熱交換するハウスの暖房システムも導入し、さらには1,400本もの苗木を購入しました。陽平さんも半ば強引にこのプロジェクトに引き込まれます。「親孝行くらいの軽いつもりで引き受けたんですが、設備が一気に進んだので、“これは本気だ。やるしかない”と」と性急な父親のサポートに回ります。
独学で栽培を試みるも、3年間は花すら咲くことがなく過ぎました。当然、実りはなく、知り合いのツテを頼って鹿児島のマンゴー生産者に指導を依頼するも、断られる。しかし、ここでも熱意が道を拓きます。何度も通って、盃を交わすうちに意気投合、ノウハウを教わることになったのです。「農業の素人ですからね。今では笑い話だけど、温度のことなんて当時は知らなかった」。そう村田さんが話す通り、マンゴーは温度管理が大変な作物。花芽を付けるためには温度を10℃ほどにする必要があり、徐々に加温して満開に導いてあげなければならないのです。鹿児島での経験を基に、北海道に合った方法を模索し、ついに収穫にたどり着きました。完熟した果実の真っ赤な色から「摩周湖の夕日」と名付けられ、出荷の時を迎えたのです。
2020年冬には暖房設備が壊れ、ジェットヒーターで温めるも低温にさらされた木が半数ほど枯れるアクシデントにも見舞われました。2022年には改めて温泉井戸を掘り、90℃の高温と毎分500Lというハウス全棟を暖められる熱源を手に入れて栽培は本格化し、約1万玉を出荷しました。2023年はこれを1万3000玉まで引き上げる計画です。
手塩にかけて育てられたマンゴーは、平均18度という糖度の高さが特徴。みずみずしさと、華やかな香りが広がります。ハウスごとに温度設定を変えられるため、出荷時期をずらして5月後半から1月までと長く穫れるのも温泉熱を利用するメリットです。
「摩周湖の夕日」は、道の駅「摩周温泉」での販売や、ふるさと納税の返礼品、地域の郵便局でのふるさと小包など地元で活用されているほか、大手百貨店でのギフトや市場を通じて全国にもその名を知られ始めています。ようかん、かりんとう、飴といった加工品にも広がりを見せているなか、「これからは通年で出せる工夫が必要。急速冷凍の冷凍マンゴーも近々発売予定です」。そのために今後は規模の拡大が目下の目標。将来的にはマンゴー以外の作物にも挑戦するため、スイカ、メロン、バナナなどを試験栽培中。人がやっていないことを――と果敢に挑む姿勢は今も変わりません。道産の果物が通年で出回ることが、もはや意外ではないときが来るのかもしれません。
今回の記事はO.toneスタッフTSが担当しました
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